はじめに

このカテゴリーでは、交通工学の観点から、「弥富相生山線」道路計画の資料を読むための基礎知識を解説しています。

前回の記事では、交通量予測で一般的に用いられている四段階推定法について紹介しました。

しかし、交通量予測には大きな課題があります。

それが誘発需要(誘発交通)です。

道路ができると交通量そのものが増えるため、予測が難しくなるのです。


誘発需要とは

例えば、渋滞している道路に新しいバイパスを建設したとします。

開通直後は渋滞が緩和されますが、数年後には再び混雑してしまうことがあります。

これは、

  • 今まで電車を利用していた人が車へ乗り換える
  • 他の道路を利用していた車が流入する
  • 混雑を避けていた人が新たに利用する

など、新しい交通需要が生まれるためです。

この現象を誘発需要といいます。


四段階推定法の弱点

交通量予測では、四段階推定法が広く利用されています。

しかし、この方法は、「交通需要はあらかじめ決まっている」という前提で計算します。

実際には道路が便利になれば交通需要そのものが増えるため、交通工学では、

四段階推定法だけでは誘発需要を十分に表現できない

という議論が続いています。

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住宅地では「ボトルネック移動」が起こりやすい

誘発需要が特に大きいのは、

  • 高速道路
  • 大規模バイパス
  • 郊外開発を伴う道路

などです。

一方、住宅地を通る比較的短い道路では、交通量が増えるというより、渋滞箇所が別の交差点へ移動する現象が起きやすいとされています。

「弥富相生山線」の場合でいえば、もし道路をつくったら、久方交差点や昭和高校前交差点の混雑がひどくなる可能性が指摘されます。


弥富相生山線ではどう考えられるか

弥富相生山線は住宅地を通る都市計画道路です。

名古屋市の資料には、

誘発交通量を予測するためには需要変動型モデルが考えられるが、実施されていない

と記載されています。

つまり、名古屋市の公表した交通量予測では誘発需要が十分に考慮されていない可能性があります。

そのため、予測値である7,700台/日を上回り、

8,000~10,000台/日程度まで増加する可能性も考えられます。

その結果、

  • 久方交差点や昭和高校前交差点の混雑
  • 新たな生活道路への流入
  • 野並・島田交差点の渋滞改善効果の減少

などが懸念されます。


誘発需要は交通量予測を難しくする

交通量予測は決して「計算すれば正しい答えが出る」ものではありません。

道路が交通需要そのものを変えてしまう以上、予測には常に不確実性があります。

そのため、道路計画を評価する際には、予測値だけを見るのではなく、その前提条件や限界についても理解することが大切です。

ここで交通政策上、大きな問題が発生します。

すなわち、交通量予測が難しい、ということは、道路計画は結果が予測しづらい、ということを意味します。

「渋滞対策=道路建設」ではない

道路建設推進派の主張には、「道路を造れば渋滞は解決する」という素朴な思い込みがしばしば見受けられます。

しかし、誘発需要という現象が示すのは、道路を造っても期待通りの効果が得られない、という直感に反する現実です。

これは、交通工学の世界では、ダウンズ・トムソンのパラドックスと呼ばれる現象です。

次の記事では、「道路を増やしても渋滞はなくならない」という交通工学の考え方である「ダウンズ・トムソンのパラドックス」について解説します。

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