弥富相生山線道路計画に関する3つ目の大きな問題点「科学的根拠を欠いた道路建設の効果」について、交通工学の観点から、関連資料を読むための基礎知識についてまとめています。

名古屋市が公表している弥富相生山線の資料には、

交通量予測:約7700台/日(約5700台/12時間)

という数字が示されています。

この数字を見て、

  • どうやって予測したのか?
  • 数値は適切か?
  • 開通したらもっと車が増えるのでは?

と思う方も多いでしょう。

というわけで、この記事では、交通量予測の基本的な考え方と、「誘発需要」という問題、そして弥富相生山線の場合について分かりやすく解説してみます。


四段階推定法

道路行政では長年にわたり「四段階推定法」と呼ばれる標準的な交通量予測手法が使われています。

  1. どれだけ人が移動するか
  2. どこへ行くか
  3. 何で移動するか
  4. どの道路を使うか

を、順番に計算していきます。

これを「四段階推定法」と呼びます。

1. まず現状を調べる(OD交通量)

最初に実際の交通データを集めます。

例えば、

  • 国道を1日に何台通るか
  • どこからどこへ移動しているか
  • 通勤なのか買い物なのか

などです。

ここで重要なのがOD(Origin-Destination)交通量です。

  • Origin = 出発地
  • Destination = 到着地

つまり

「どこからどこへ移動したか」

を表します。

例えば、

出発地 到着地 人数
A町 B町 1000人
A町 C町 500人
B町 C町 800人

こんな表を作ります。

これが「OD表」です。

2. どれだけ人が移動するか(発生・集中交通量予測)

次に、人口や従業者数などから、

その地域でどれくらいの移動が発生するか

を予測します。

イメージとしては

  • 大きな住宅地 → 人がたくさん出発
  • オフィス街 → 人がたくさん到着

です。

  • 使う計算式:

主に重回帰分析(線形方程式)を使います。

発生交通量 = a (その地域の人口) + b (従業者数) + c

といった多変数の式で、将来の人口予測なども用いて計算します。


3. どこへ向かうか(分布交通量予測)

次に、

どの地域からどの地域へ向かうのか

を予測します。

例えば、

A町から出発する人が1000人いたとして、

  • B町へ600人
  • C町へ300人
  • D町へ100人

のように振り分けます。

ここで使うのが重力モデルです。

例えば、買い物に行くとき、

  • 大きくて魅力がある
  • 近い

場所へ行きやすい、といえます。

これを表現するのが「重力モデル」です。

  • 使う計算式:

「重力モデル」は物理学の万有引力の法則に似た数式です。

ゾーンAからBへの移動量 = k (Aの発生量 × Bの集中量) / (AとBの間の距離または時間)^2


4. 何で移動するか(手段配分)

移動する人が、

  • 自動車
  • 鉄道
  • バス

のどれを利用するかを予測します。

例えば、名古屋駅まで行くケースでは、

  • 時間
  • 費用
  • 電車の乗換回数

などを考慮して、何%が車を使うかを計算します。

ここで初めて「車が何台移動するか」が決まります。


5. どの道路を使うか(交通量配分)

最後に、

自動車が実際にどの道路を走るか

を計算します。

ドライバーは基本的に最も早いルートを選びます。

しかし、全員が同じ道を選ぶと渋滞するため、一部は別ルートへ移動します。

このバランスをコンピューターで計算し、

新しい道路に何台の車が流れるか

を求めます。

  • 使う計算式:

    「利用者均衡配分理論」というゲーム理論に近い数理モデルを使います。

  • 結果:

最終的に「どのドライバーも、これ以上ルートを変えても早く着くことはできない(誰も損得なし)」という安定した状態(均衡状態)に達します。

この状態のときに、「新しい道路に何台の車が流れているか」が最終的な予測交通量になります。


実務では

実際の交通量予測では、

  • 時間帯別(朝ピーク・昼間・夕方)
  • 乗用車と貨物車を分離

などのパラメータも活用されているようです。

というわけで、「弥富相生山線」の7700台/日という数字も、このような手法によって算出されたものと思われます。


交通量予測の課題「誘発需要」

しかし交通量予測には、昔から指摘されている課題があります。

それが 誘発需要です。

例えば、渋滞がひどい道路にバイパスを作り、開通直後は渋滞が減ったとします。

ところが数年後、再び混雑していることがあります。

これは、

  • 今まで電車を使っていた人が車に変える
  • 混雑を避けていた人が車で出かける
  • 遠くまで車で移動する人が増える

など、新たな交通需要が発生するためです。

これが誘発需要です。

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交通転換によるボトルネック移動

「誘発需要」の他にも、新しい道路によって交通の流れが変わり、今まで混んでいなかった交差点が混むようになる、という問題があります。

「弥富相生山線」の場合は、

  • 昭和高校前の交差点
  • 久方交差点
  • その周辺の交差点

などの混雑が問題になります。

交通容量比(混雑度)

この交差点の混雑度を示すのが、交通容量比という考え方です。

新規道路の効果を考える場合、交通量予測に基づいて、ボトルネックとなる交差点の交通容量比(混雑度)についても、計算する必要があります。

「弥富相生山線」で大きな問題になるのは、この点です。

この点については、別ページで解説します。

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