名古屋市天白区に広がる豊かな自然、相生山緑地。

いま、この森を壊す道路建設計画が再び動き出そうとしています。

しかし、この計画には多くの疑問やリスクが隠されています。

学術検証委員会の議事録や市民意見を参考にして、8つの視点から問題点を明らかにします。


問題点① 住環境への悪影響と事故の発生リスク

問題点①

名古屋市は、新規道路の交通量を、1日あたり約7700台としています。

つまり、1年間では約281万台という交通が新たに発生することになります。

この影響が重大であることは、常識的に考えれば明白です。

1. 「車両入り込み対策」は事実か?

市側がもう一つの大義名分として掲げる「生活道路(住宅街)への車両入り込み対策」には定量的な根拠が欠落しています。

むしろ、道路建設によって逆に悪化する可能性があります。

2. 住環境への悪影響

騒音、空気汚染・振動、ゴミの不法投棄など、住環境への悪影響が懸念されます。

また、緑地へのアクセスが容易になることで、治安悪化のリスクもあります。

騒音問題に関しては、資料には「問題なし」とする評価が示されていますが、本来使うべきは「環境基準」に照らすと、市の予測値は基準を大きく超過しています。

3/1の「説明会」における質疑や市民意見においても、住環境への悪影響について、地域住民から切実な声があがっています。

3. 治安悪化の懸念

緑地へのアクセスが容易になることで、「珍走集団」が走ったり、緑区の大高緑地のように、緑地内の治安悪化のリスクもあります。

4. 新たな事故の発生リスク

年間約281万台という交通が新たに発生する、ということは、新たな事故のリスクも発生する、ということを意味します。

生活環境に近い交差点では、全国の道路の平均的な事故率を当てはめると、年間数件の重大事故が新たに発生してもおかしくない、といえます。

5. 森林区間特有のリスクも

緑地内を通る区間には、都市部の道路にはない固有のリスクもあります。

森林区間内での重大事故の懸念もあり、厳重な防火体制が必要になります。

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問題点② 科学的根拠を欠いた「道路建設の効果」

問題点②

1. 野並・島田交差点は、そもそも渋滞しているか?

名古屋市は、道路計画の主な目的として、「野並・島田交差点の渋滞対策」を挙げています。

しかし道路改良の結果、渋滞は現在ほぼ解消しており、これは名古屋市の資料からも裏付けられます。

2. 誘発需要

誘発需要(新しい道路が自ら生み出す新たな交通量)という現象のため、交通量の予測はそもそも難しい、とされます。

渋滞対策を目的として道路を新設しても、誘発交通により、再び渋滞が発生するケースがあります。

3. 交通容量比(V/C比)の評価は適切か?

昭和高校交差点と久方交差点の混雑度を示す「交通容量比(V/C比)」について、「1.0未満だからOK」と問題がないように記載していますが、根拠が希薄です。

しかも交差点の場合は、交通容量比(V/C比)ではなく、「交差点需要率」で評価すべきです。

4. 費用便益比(B/C)が破綻している可能性

名古屋市は、市会の土木交通委員会にて、費用便益比(B/C)の再算定を拒否しています。

それでも、あえて試算をすると。B/Cは1.0を下回っている(=赤字の)可能性が高い、といえます。

5. 名古屋市のデータの矛盾点

昭和高校前交差点のデータについて、名古屋市の資料には矛盾点があります。

  • 適用すべき基準を間違っている
  • データが矛盾している

という2つの問題がある以上、もはや名古屋市の資料が信用できない、という事態になっています。

6. 時間短縮効果への疑問

名古屋市は、「弥富相生山線」の整備効果として、一般車両・緊急車両の移動時間短縮を挙げています。

しかし、新設道路の混雑の可能性、データの信頼性の欠如、「誘発交通」の影響など、いくつもの疑問符がつきます。

「時間短縮効果」は、実際には多くの不確実性の上に成り立っています。

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問題点③ ヒメボタルや生態系への深刻なダメージ

問題点③

1. 相生山緑地の生態系コアの破壊

相生山緑地は、日本有数のヒメボタルの生息地です。

道路建設予定地は、そのヒメボタルにとって最重要地域「コア(核心部)」です。

この最重要地域の真ん中に、年間281万台が通行する道路を建設しようとする、異常な計画です。

2. 「絶滅の渦」へのリスク

最も生息密度の高いエリアが破壊されれば、遺伝的多様性が損なわれ、絶滅へ向かう危険性があります。

3. 手抜きの環境調査(アセスメント)

成虫を1シーズンわずか3回目視しただけの手抜き環境調査(幼虫やエサの調査軽視)。

市の環境調査は、外から飛んできた成虫の数を1シーズンにわずか3回目視で数えただけの不十分なものです。

4. 「ヒメボタルが守れる」と言うために必要なもの

2025年度に実施した「学識者ヒアリング」の資料には、

緑地内の広範囲にいるので道が出来ても絶対残る。

などという非科学的な発言が掲載されています。

「ヒメボタルは大丈夫」と科学的に主張するためには、個体数の現況調査だけでは不十分であり、十分なデータと適切な数理モデルの構築が必要です。

5. 専門家が必須とした「夜間通行止め」の後退

学術検証委員会で必須とされた「夜間通行止め」の措置が、現在の市の案では「検討する」という曖昧な表現に後退しています。

6. 見せかけの「緑化」

人工の覆い(シェッド)の上に土を盛るだけの緑化は、見た目を取り繕うポーズに過ぎません。

7. 「予防原則」を適用すべき事案

本事業による影響は、専門家にも予測できません。「影響が不確実なときこそ、取り返しのつかない選択を避けなければならない」という予防原則が必要です。

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問題点④ 水環境の破壊による森の乾燥化と災害リスク

問題点④

都市を守ることは、地上と地下の水環境を守ることです。

1. 乾燥化の悪循環

道路をアスファルトで覆うと雨水が地下に染み込まず、森の乾燥化の要因となります。

また「エッジ効果」による森の乾燥化も懸念されます。

近年の生態学研究では、環境変化が「乾燥がさらなる乾燥を呼ぶ」といった再帰的なループを生むことが分かっています。

2. 地下水脈の分断リスク

相生山緑地の工事未着工区域には水源があります。

道路建設によって、地下水脈が断ち切られて、豊かな森が乾燥してしまう恐れがあります。

市は「影響はない」と主張しますが、降水量との正確な対応データや、工事前後で比較可能な水位データが欠落しています。

3. 洪水や森林火災の災害リスク

森の乾燥化は、下流の洪水リスクも高めます。

相生山を水源とする郷下川は、2000年の東海豪雨の際に、氾濫を起こして野並地区に深刻な被害をもたらしています。

また森の乾燥化は、森林火災のリスクも高めます。

名古屋市は、新規道路の防災機能を謳っていますが、逆に災害リスクを高めており、本末転倒です。

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問題点⑤ 市民の財産である森と景観の毀損

問題点⑤

1. 大都市の住宅地に、奇跡的に残された里山

相生山緑地は、ただの「緑地公園」ではありません。

大都市の住宅地のただ中に、奇跡的に残された、貴重な里山です。

2. 森が果たしている、多面的な機能

相生山緑地のもっとも自然が豊かな場所に道路を通すことによって、森の癒し効果、レクリエーション機能、ヒートアイランド緩和機能などが低下します。

これらの機能を金銭的に見積もることは簡単ではありませんが、その価値の低下は、巨大な経済的損失となります。

3. 自然が心と体にもたらすウェルビーイング効果

自然に触れることで、ストレスが和らぎ、心や体の調子が整うことは、近年の研究でも広く知られます。

年間281万台の車両が通ることで、ウェルビーイング効果が低減します。

4. シビックプライド(市民の誇り)の毀損

地域の宝であるヒメボタルの森が壊されることによって、地域住民のシビックプライドにも悪影響があります。

5. 環境教育・地域文化の衰退

道路建設は、地域で育まれてきた自然観察活動や、ヒメボタルの保護運動や、子どもたちの自然体験の場の縮小につながります。

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問題点⑥ 時代遅れの計画と、市の環境政策との矛盾

問題点⑥

1. 始まりは60年以上前(1957年)の計画

高度経済成長期の1957年に決定された古い計画であり、開発最優先だった時代の遺物です。

現代社会が目指す、自然と共生する持続可能な都市とは根本から対立しています。

2. 名古屋市自身の環境政策との完全な矛盾

市が掲げる「生物多様性なごや戦略」「水の環復活なごや戦略」と真っ向から矛盾しています。

2024年7月には「名古屋市内の生物多様性重要エリアマップ」を公開しましたが、このマップにおいて、相生山緑地は全域が「重要エリア」に含まれており、矛盾は異常なレベルです。

3. COP10開催都市としての国際的責務

2010年に名古屋でCOP10が開催され、「SATOYAMAイニシアティブ」として里山保全は国際公約となりました。

名古屋市は国際的な責任を果たすべきです。

4. 社会的公正の欠落

便益を受ける側(車両の運転者、建設事業者)と損失を負う側(高齢者、子供、将来世代)が別々である構造は、深い不満を生む典型的な構図です。

5. 戦略的環境アセスメント(SEA)の未導入

行政は「道路を造る前提」で動いており、「造らない(ゼロ・オプション)」との比較検証がありません。

相生山緑地という巨大な「自然資本」が持つ経済的価値を正しく換算し、道路の利便性と天秤にかけるプロセスが抜け落ちています。

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問題点⑦ 公約破棄と、不誠実な住民合意形成

問題点⑦

1. 「方針を100%継承する」とした選挙公約の破棄

現市長は、道路事業を止めていた「河村前市長の方針を100%継承する」と約束して当選したにもかかわらず、それを覆して工事再開へ舵を切りました。

これは有権者への信義に反します。

2. 住民説明会への市長不参加・直接対話の拒否

重要な住民説明会に現市長は一度も出席していません。

2026年3月の説明会も他行事を優先して欠席しており、市民へ直接説明を尽くす姿勢が見られません。

3. 多数の「反対意見」を軽視

地元には「反対」意見が多くあるにもかかわらず、行政は道路建設に前のめりな姿勢で計画を進めようとしています。

4. 折衷案という名のまやかし

市は当初「緊急車両だけが通る環境に優しい折衷案」と言っていました。

しかし、2026/3/1の説明会では、結局は一般の車も通れる方針に変更しています。

本事業をめぐる問題点の多くが、一般車両の通行に起因します。

これでは当初案と変わらず、「折衷案」という名称はまやかしです。

5. 学識者の意見の「都合の良い切り取り」と不信感

中立であるべき委員会において、行政は「つなぐ以外ない」といった一部の発言だけを都合よく切り取り、工事再開の大義名分に利用しています。

また、2026/3/1の説明会資料に掲載されていた「学識者ヒアリング」の学識者意見は、学識の名に値しない意見です。

実際に、説明会後に募集された「市民意見」には、学識者意見に対する疑義を指摘する声が、22件も寄せられています。

6. まやかしのアンケート

造る前提の不公平な調査でありながら、当局は「住民の多数が賛成」と強弁しています。

7. 恣意的な「徒歩避難シミュレーション」

市は「道路をつくれば災害時の徒歩避難時間が短くなる」というシミュレーションを提示していますが、市民から、その恣意性が指摘されています。

8. 進捗率と予算執行率の意図的な混同

本事業の予算の執行率は、80%(約29億円)となっています。この80%という数字を利用して、「道路はあと少しで完成」と言う心理を誘導しています。

しかし、実際の工事進捗率は約60%にとどまっています。

9. 住民間の対立

本事業計画は、長年に渡って住民同士で意見対立が起きています。

強引な工事再開は、住民間の対立や分断を深刻化させかねません。

10. 広沢市長は、誰の・どんな意見に基づいて判断したか?

2025年11月に、広沢一郎・名古屋市長は建設再開を表明しました。

河村市政を「丸ごと継承」という謳い文句で当選しているので、これは重大な公約違反です。

いったい広沢氏は、誰から、どのような意見を聞いて、河村市政のレガシーを破壊する意思決定を行ったのでしょうか?

その意思決定のプロセスを明らかにする必要があります。

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問題点⑧ 財政問題と、公共事業としての不適格性

問題点⑧

1. 過去最大・約922億円の収支不足という財政難

名古屋市の財政は、貯金(財政調整基金)を取り崩す異例の事態です。

公共サービスの値上げが相次ぐ中、本事業に巨費を投じる妥当性はありません。

2. インフレ・資材高騰により、費用便益比(B/C)はどうなる?

資材高騰や人件費上昇で工事費が大幅に膨らんでいるはずです。

しかし、市は最新データによる「費用便益比(B/C)」の再算定・開示を拒否しています。

3. 長期的な維持管理コスト

公共インフラの議論では、完成後にかかり続けるコストこそが、長期的な財政負担の本体です。

長期的な人口減少が進む中で、この道路が将来「負の遺産」となるリスクも現実的です。

4. 「見えにくい環境コスト(外部不経済)」の無視

森の乾燥による損失、周囲のヒートアイランド化に伴うエアコン代や健康被害の増大、洪水対策費など、マイナスの「外部不経済」が排除されています。

5. グリーンインフラとしての「自然資本」の経済評価の欠落

相生山緑地は、巨大なグリーンインフラ(生態系サービス)です。

その経済的価値(自然資本)を正しく金額に換算して、恩恵の大きさを理解することも大切です。

6. 公共事業全体における「優先順位づけ」が不明瞭

名古屋市は財政難を抱えています。

インフラや教育施設の老朽化対策など必要性の高い事業を後回しにして、「弥富相生山線」道路計画を推進しているとしたら、大問題です。

7. 防災道路としての必要性が希薄

名古屋市は、災害時の避難路や緊急車両の時間の短縮という「防災機能」を謳っていますが、緊急・防災時の機能はすでに確保されています。

そもそも相生山緑地は、防災拠点としての位置づけであり、避難路ではなく避難先となる場所です。

8. 少子高齢化により新規道路の必要性が希薄に

少子高齢化を迎える中、相生山緑地周辺の交通量も、将来的に減少傾向にあると予想されています。

「弥富相生山線」の新設道路の利用者もまた、将来的に減少すると予想されています。

長期的に見れば、道路の必要性もどんどん希薄化する一方、道路の維持管理にかかる総コストは変わらず、市民一人あたりの財政負担は増えていきます。

9. 公共事業としての原則を満たしていない

税金を使った公共事業を行うには、 「必要性・緊急性」「合理性」「比例性」「持続可能性」「政策整合性」「統治性(ガバナンス)」といった原則が必要です。

しかし、これまで問題点について見てきたように、この道路計画には、どの原則も当てはまりません。

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名古屋市当局への強い要望

要望① 「ゼロ・オプション」の提示

「道路建設の中止」を選択肢から排除せず、環境や財政への影響を対等に比較したオープンな議論を行うこと。

要望② 市長が出席する「開かれた再説明会」の開催

都合の良い書類の配布や一方的な説明で済ませず、市長自身が必ず出席し、市民の前で直接疑問に答え、説明を尽くすこと。


8つの問題点に関する市民意見のデータベース

「弥富相生山線」折衷案に対する、452件の市民意見をデータベース化しました。

それぞれの意見を、8つの問題点に分類しています。


8つの問題を、「3つの要因」に整理

「弥富相生山線」問題は、影響が多岐にわたり、とても複雑です。

問題点を8つに分類しましたが、それでもまだ把握しにくいと思われます。

そこで、これらの問題点を発生させる「原因」という観点から、あらためて整理してみました。

3つの要因