「第3回学術検証委員会議事録」の要約です。

資料

第3回学術検証委員会

  • 日時:2010年4月2日 午後3時~5時
  • 会場:名古屋市役所 正庁
  • 参加者(50音順):山下委員長、林副委員長、足立委員、大場委員、加藤委員、寺井委員、秀島委員、増田委員、松本委員、武田オブザーバー委員 大竹インスペクター、岡村インスペクター、長谷川インスペクター
  • 傍聴者:17名
  • 報道:7社(中京テレビ、名古屋テレビ、テレビ愛知、建通新聞、読売新聞、中日新聞、毎日新聞)、フリージャーナリスト:1名

インスペクター(専門家)によるこれまでの検討

道路建設の現場で技術的な助言を行ってきた専門家は、単なる「推進派」ではなく、「建設の強制力と自然保護の狭間」で折り合いを探ってきました。

住民対立の緩和

行政と住民の対立を裁定する「インスペクター制度(英国)」に近い役割を担おうとしたが、法的権限はなく、技術的な検証に留まった。

生態系・ヒメボタル保護に関する専門的知見

相生山の特殊な環境と、ヒメボタル保護のための具体的な提案がなされています。

1. 夜間通行止めの絶対条件

  • ヒメボタルの交尾期間(5月〜6月)の夜間(23時〜明け方)は、「通行止め」にすることが保全の絶対条件であると強調(岡村氏)。

2. 相生山の土壌の特殊性

「体は大人、心は子供」のような、未成熟だが多様性に富む痩せた土壌。
放置すればゴミと竹に覆われるため、適切な「人の介入」が必要。

科学的検証における新たな問題提起

委員会のメンバーからは、これまでの調査や前提に対する厳しい指摘が相次ぎました。

1. 水環境への悪影響(寺井委員)

道路建設により雨水の直接流出率が 37%から55%に上昇
名古屋市の「水の環復活戦略」に逆行する数値。

注)重要な指摘ですので、発言を抜粋・引用します。

そのアセスが極めていい加減だったということですが、アセスをきちんとや る必要があると思います。

これはこの前も言いましたが、水環境の点では、「水の環復活 2050 なごや戦略」というのが制定され、それでは名古屋市の緑が今非常に少なくなっており、それを 2050 年までに 36%まで増やすという目標を掲げて、どうすればいいかということを計算しています。

それで、実際に相生山に道路を通した時に水環境がどうなるかということで、事務局の方に計算してもらいました。

そうすると、今道路を造らないで緑地のままであったとすると、降った雨の 37%が浸み込まずに直接流出します。

ところが道路を造ると、今の計画で歩道を造って、浸透枡を造って、シェルターに緑を造ってという配慮をして道路を造ったとしても、道路を建設した場合に降った雨の 55%が直接流出するという計算結果がでてきました。

将来 36%という水の直接流出の目標からすると、55%の流出というのはものすごくマイナスです。

ですから、この道路計画は既に水の環復活戦略に組み込まれているという話なんですが、実際に計算してみてそれだけ水が浸み込まないことになると、やっぱり道路の建設の必要性が、どうしても必要だということでなければ、考える必要があると思いました。

2. データの不十分さ(足立委員)

既存の地質調査(ボーリング等)が不十分。
水がどのように湧き出すかのメカニズムが解明されていない。

3. 「造らなかった場合」の検証不足(松本委員)

地下鉄桜通線や環状2号線の開通を前提とした最新データによる、交通需要の再予測(With/Without)が必要。

検討の枠組みの提案

カテゴリ 重点検証事項
道路建設の必要性 都市計画の歴史、救急・消防等の社会的事項、最新の交通需要予測
環境影響(自然) 生物多様性(ホタル・オオタカ等)、水環境、緑地の将来像
環境影響(人為) 大気汚染、アメニティー、次世代への価値の継承

今後の論点:道路か緑地か、それとも「管理」か

1. 建設の是非の再定義

「造ることを前提とした制約」から解き放たれ、科学的根拠に基づいて必要性を再検討する。

そもそもこの道路を造らなくてはならない目的は何なのか?

渋滞が解消するという話は、新しい違うところで渋滞するのではないか?

2. 緑地管理のビジョン欠如

*道路の有無にかかわらず、相生山をどう維持していくのか(竹害対策など)という名古屋市全体のビジョンが問われている。

3. 「考える機会」としての道路

もし道路を造るなら、夜間閉鎖などを通じて利用者に環境負荷を意識させる「不便な道路」という発想。


明らかになった問題点

「第3回学術検証委員会」では、この道路計画についての、いくつかの本質的な問題点が指摘されています。

1. 夜間通行止めの絶対条件

ヒメボタルの交尾期間(5月〜6月)の夜間は「通行止め」にすることが保全の絶対条件。

2. 水環境への悪影響

名古屋市の「水の環復活戦略」に逆行する数値。

3. 道路建設のそもそもの目的を問う

渋滞が解消するという話は、新しい違うところで渋滞する、ということではないか?


感想

「道路計画のそもそもの目的は?」「道路計画は本当に必要だったのか?」という本質論が議論されるようになったことは前進といえます。

しかしながら、2025年11月に発表された「折衷案」には、これらの本質的な問題点は言及されておらず、学術検証委員会の指摘を無視した形となっています。