2010年3月2日に開催された第2回「相生山緑地の道路建設に係る学術検証委員会」にて、11名の市民から意見が陳述されました。

このページでは、八田耕吉氏の意見陳述を抜粋して紹介いたします。


八田耕吉氏の意見陳述

八田氏: 限られた時間ですので、資料を用意すればよかったのですが、80枚刷るのは市民には非常に負担です。

今後検討していただければよろしいかと思います。

3分ですので、作った資料の一部を読み上げることとさせていただきます。

昨年10月に道路建設課を訪れ、調査方法についてT主査とお話をしたとき、

「あなたはヒメボタルをみたことがあるのか」

と聞かれました。

たぶん彼は相生山の道路建設時に、市民からよく聞かされた言葉がつい出てしまったのではないかと思われます。

確かに自然の良さや、生物の素晴らしさなどは、実際に経験した人にしか解らないことであり、一度検証委員会のメンバーにもヒメボタルが見られる時期にぜひ来ていただきたいことを最初にお願いしておきます。

相生山の良さやヒメボタルの素晴らしさについては、このあと何人かの方からお話が有るかと思いますので、私はこれらを客観的に評価するための調査法についてお話させていただきます。

前回の検証委員会において、ヒメボタルの幼虫調査が最大規模の調査と説明され ていましたが、市民が行う調査には、そのような魅力的な表現も必要ですが、それよりも、この調査は市民団体や専門家の指導のもとに行われています。

そして、市の調査ではなく、市民が行ったものです。

適切な指導者のもと広い範囲で行われた結果がこのようになっています。

その上、第1回検証委員会において紹介された幼虫調査は、ルート変更された後に市民が行った調査です。

幼虫調査後にルートの変更が決定されたかのように、ごまかしがなされています。

選任された検証委員の皆様には、どのように説明がなされていたのでしょうか。

間違った認識でのルート変更が行われた結果、成虫の生息地をはずしたがために、幼虫の生息地の真ん中を通過するルートに変更をしました。

このような根本的な誤りを犯す結果となりました。

成虫調査あるいは幼虫調査の詳しい内容は時間がありませんので、基本的には海上の森の自然のようにギフチョウやハッチョウトンボがいることが重要ではなくて、2600 種を越す種がいることが重要であることを頭においていただきたいと思います。

生物多様性とは、その地域生態系を構成している多くの種により成り立ち、この種の存在によりヒメボタルも生存することができるのです。

あくまでも、ヒメボタルはその環境における代表種です。

今回調査の必要性が多くの委員の方からお話しがありましたが、改めて相生山の自然の重要性を確認するためにも、相生山全体の動植物の精度の高い調査が必要であることを述べて陳述を終えます。

市民の意見


添付資料1:

「相生山緑地の道路建設に係わる検証委員会」の意見陳述書

昨年10月(26日)に、道路建設課を訪れ、調査方法についてT主査とお話をしたとき、 「あなたはヒメボタルを見たことがあるのか」と聞かれました。

たぶん、彼は相生山の道路建設時に、市民からよく聞かされた言葉がつい出て しまったのではないかと思われます。

確かに、自然のよさや、生物の素晴らしさなどは、実際に経験した人にしか解からないことであり、一度検証委員会のメンバーにもヒメボタルの見られる時期にぜひ来ていただきたいことを最初にお願いしておきます。

相生山の良さやヒメボタルの素晴らしさについては、この後何人かの方から お話があるかと思いますので、私はこれらを客観的に評価するための調査法に ついてお話させていただきます。

前回の検証委員会において、ヒメボタルの先虫調査が最大規模の調査と説明されていましたが、ただ単にトラップ(フイルムケース)の数が多いということだけでは、正確な分布や個体数推定の精度が高くなるとは限りません。

大雨や、野生動物などによる捕食などの大量殺戮にもつながる危険性をはらんでいることにも注意を払わなければなりません。

調査地域や調査対象昆虫の移動距離をも考慮した数の設定がなされておれば、必 ずしも多いほうが正確とは限りません。

市民が行う調査には、そのような魅力的な表現も必要ですが、それよりも、この調査は市民団体「相生山緑地ヒメボタル幼虫調査実行委員会」が「兵庫県立人と自然の博物館」の八木剛さんの指導のもとに行われたものです。

そして、市の調査ではなく、市民が行った調査です。

このように適切な指導者のもと、広い範囲で行われた調査が結果的に最大規模と称されただけであります。

その上、第1回の検証委員会においてパワーポイントで紹介された資料5ページ目の幼虫調査は、「環境に配慮した道づくり」施エワーキングにおいてルート変更された後に市民が行った調査です。

ルート変更が幼虫の生息地域を破壊する可能性が大であることについては、「相生山の自然を守る会」の「提案書」において、私は「正しい環境の評価がなされていない」として幼虫調査の重要性について触れておきました。

前回に示された資料は、幼虫調査後にルートの変更が決定されたかのように、「名古屋都市計画道路事業現況図」を載せるごまかしがなされています。

新しく選任された検証委員の皆様には、どのように説明がなされていたのでしょうか。

如何に優秀な専門家集団であっても、昆虫や生態学の専門家がいない「環境に配慮した道づくり専門家会 のような間違った認識でのルート変更が行われた結果、成虫の生息地をはずしたがために、幼虫の生息地の真ん中を通るというルート変更を行う、根本的な誤りを犯す結果となっています。

成虫調査についても、メッシュごとの目視による頻度調査が行われていますが、数少ない観察記録に加え、量的な把握がなされないまま行われています。

調査は、1シーズン3回と少ないだけでなく、観察日及び観察時間がピーク時とは一致しているとは言えないだけでなく、発生時間時期及び移動距離などの雌雄の違い (雌は後ろ翅がなく、 飛べない) や、一般的に昆虫の場合はオスのほうがメスより早く羽化するなどの特性を考慮して行うためにも、ただ単なる分布ではなく、量的な把握が必要です。

昆虫の調査では、幼虫の確認が可能な場合には、成虫の分布よりも幼虫の分布 のほうが環境への適応性を見るのには適しています。

特にホタルやトンボのように成虫に飛翔能力が高い場合は、成虫により分散拡大される開放型よりも、えさ生物や生息環境の悪化 (乾燥など)による影響を直接受ける幼虫のほうが環境評価を見るのには適しています。

その種がそこの環境にあっていれば、その種は定着するでしょう。

海上の森の自然は、 ギフチョウやハッチョウトンボが生息していることだけが重要であるのではなく、2600種を越す昆虫が生息していることこそ重要であります。

私たちの年間を通して週2回行った調査では、その日にしか確認が出来なかった昆虫が 6.1%もあり、 その日を逃すと見つからなかったかもしれない種が3分の2もいることを示しています。

生物多様性とは、その地域生態系 (環境) を構成している多くの種により成り立ち、多くの種の存在によりヒメボタルも生存することが出来るのです。

あくまで、ヒメボタルはその環境における代表種として扱われていますが、 多くの生物種の存在により生存しているのであって、その地域生態系の一員でしか ありません。

すなわち、ヒメボタルはその地域の多くの種が生息する環境・地域生態系の 一員として生息しており、道路建設に伴う工事や構築物の影響が生物たちに及 ぼす影響を知るためにも、そして改めて相生山の自然の重要性を検証するため にも、相生山全体の動植物の精度の高い調査が必要です。

添付資料2

正しい環境の評価がなされていない

「環境に配慮した道づくり」の施工ワーキングにおいて、専門家会の環境評価には自然に対する評価に大きな誤りがある。

正しい自然への評価がなされないまま、環境への配慮が出来るとは考えられ ない。

名古屋市における「ヒメボタル分布調査」を元に、その問題点を整理する。

● 自然を評価するには、 生物多様性が重要であるということは良く知られるようになったが、相変わらずの貴重種保護が優先されている。

ヒメボタルがその地域生態系において代表される種であるという観点から選ばれているのであり、その種だけが保護されればよいというものではない。

佐渡の5羽のトキを環境省 (庁)が捕獲したことにより絶滅したのに対して、中国では同時期に見つ けられた7羽のトキの保護を地域ぐるみで行ったことによる保 護に成功した例からも容易に理解できるであろう。

● 生態系の保護を論じるには水系や地質などの地理的要因、気象学的要因、植生環境などの特徴をきちんと把握し、特徴種としてのヒメボタルの生息環境を保護する配慮が必要であることはもちろん、その種だけが生き残ってもえさとなる生物が生存していなければだめであろう。

● 第3に、ヒメボタルの生息にとって重要なのは卵から幼虫、さなぎ、成虫を通しての環境がセットでそろっていることであり、成虫の飛翔地域をはずせばよいということではない。

すべての環境がそろっていることはもちろんのことであるが、その種の生息に 重要なのはむしろ移動が少ない、成長する幼虫期の生息環境が重要である。

この点においても名古屋市が行った成虫調査は、精度や手法の欠点を無視しても調査に値しない。

(あまりにも科学的 根拠のない、初歩的な問題であるため、ここでは詳しくは省略する。)

ここでは、市民における幼虫調査結果を参考にすべきであろう。

分布状況で「ほぼ全域で確認」、「他地域で確認された」 として、計画路線上にいなくなっても影響が少ない、配慮しているとされているようであるが、植物版レッドデータブックの監修にかかわった日本自然保護協会は「他地域に分布するという理由の元に生息地・生育地を奪うことが行われる限り、それらの種は確実にしかも非常に短時間のうちに絶滅してしまう」と書いている。

その地域に生存できる個体群を維持するためには、その個体群の個体数、生息に必要な面積、そして、最適な環境が判らないときにはできるだけ広い面積で保護されなければならない。

もし、その環境が不適となったときに良好な環境への移動が保障されな ければ、その個体群は絶滅するであろう。

そのためには、いろんな遷移の段階を持った景観(多様な生態系の集まり)が必要である。そのような景観を代表するのが、里山である。


添付資料の要約

上記の2つの資料は、相生山緑地の道路建設事業における名古屋市の環境調査およびルート選定の妥当性について、生態学的な観点から鋭く批判した意見書です。

主な内容は以下の4点に集約されます。

1. 調査手法の不備:成虫調査から「幼虫調査」への転換

資料は、名古屋市が行った「成虫(飛んでいるホタル)の目視調査」の精度が極めて低いと指摘しています。

  • 幼虫調査の重要性: ヒメボタルの成虫(特にメス)は飛翔能力が低いため、移動の少ない「幼虫」の生息分布こそが、その環境の適応性や保全価値を判断する上で最も信頼できる指標であると主張しています。
  • 調査精度の欠如: 市の成虫調査は回数が少なく、発生のピークや雌雄の特性を考慮していないため、量的な把握がなされていないと批判しています。

2. ルート変更の根本的な誤りと不透明性

道路計画のルート変更プロセスにおける「専門性の欠如」と「情報の歪曲」を指摘しています。

  • 誤った回避策: 「成虫の生息地を避ける」という名目でルート変更が行われましたが、昆虫生態学の専門家が不在であったため、結果的に「幼虫の生息地の中心」を貫通する最悪のルートを選んでしまったと述べています。
  • 資料の「ごまかし」: ルート変更の決定と幼虫調査の時期について、事実関係を誤認させるような資料提示(現況図の載せ替え等)があったと厳しく糾弾しています。

3. 単一種保護から「生態系全体」の保全へ

「ヒメボタルさえ守ればよい」という考え方そのものが、生物多様性の観点から誤っていると強調しています。

  • 代表種としてのホタル: ヒメボタルはあくまでその地域の環境を象徴する「代表種」に過ぎません。それを支える餌生物や、他の2,600種を超える昆虫、水系、地質を含めた「地域生態系(景観)」全体の保全が必要です。
  • 保全の成功例: 中国のトキの保護成功例を引き合いに出し、種単体ではなく地域ぐるみで生息環境全体を守ることの重要性を説いています。

4. 保全生態学的な原則の軽視

「他の場所にもいるから、ここを壊しても大丈夫」という開発側の論理を強く否定しています。

  • 絶滅への道: 他の生息地があることを理由に現在の生育地を奪い続ければ、種は短期間で絶滅します。
  • 多様な景観(里山)の必要性: 良好な環境への移動が保障されるよう、広い面積と多様な遷移段階を持つ景観を維持することが、個体群の維持には不可欠であると結論づけています。

まとめ

これらの資料は、行政側が「環境に配慮している」と主張する根拠(成虫調査やルート変更)が、科学的・生態学的な実態を伴っていないことを明らかにしようとしています。

特に、「移動能力の低い幼虫の生息地を破壊することは、その場所の個体群の絶滅に直結する」という点は、環境アセスメントの不十分さを裏付ける強力な論拠となっています。


八田耕吉氏の意見のポイント

八田耕吉氏は、昆虫の専門家の立場から、きわめて鋭い批判を投げかけています。

  • 調査手法の不備
  • ルート変更の根本的な誤りと不透明性
  • 単一種保護だけでなく、「生態系全体」の保全の必要性
  • 保全生態学的な原則の軽視

「環境に配慮した道づくり専門家会」は、昆虫や生態学の専門家が不在のため、間違った調査を行っていた、ということです。

名古屋市の道路行政は、これらの指摘に、真摯に向き合う必要があります。