「第2回学術検証委員会議事録」の要約です。

資料

第2回学術検証委員会

  • 日時:2010年3月2日 午前10時~12時
  • 会場:名古屋市役所 正庁
  • 参加者(50音順):山下委員長、林副委員長、足立委員、大場委員、加藤委員、寺井委員、秀島委員、増田委員、松本委員、武田オブザーバー委員
  • 公述人:11名
  • 傍聴者:14名
  • 報道:5社(中京テレビ、名古屋テレビ、建通新聞、読売新聞、中日新聞)、 フリージャーナリスト:1名

評価軸A:経済・交通機会

道路建設による渋滞緩和効果と、公共交通(地下鉄)との整合性が議論の中心です。

1. ASI(回避・転換・改善)の視点

林副委員長は、交通発生の「回避(Avoid)」と「転換(Shift)」の検討が不十分であり、道路建設という「改善(Improve)」に偏っている、と指摘。

2. 地下鉄延伸の影響

地下鉄延伸による需要低下を再推計する必要がある。

3. データの古さ

  • 需要予測に用いられたデータが古い
  • 道路を「整備しない場合」の予測が欠落
  • 多様なシナリオ分析が欠落

評価軸B:生活・教育・文化

緑地へのアクセス向上と、道路による環境分断のトレードオフが問われています。

1. 管理方針の不在

増田委員は、市民と行政の間で「相生山をどう管理し、活用したいのか」という将来ビジョンを議論すべきだと提言しました 。

2. 手続きの合理性

秀島委員は、通過交通者や周辺住民の利害関係が正しく反映され、計画プロセスが合理的であったかを検証すべきだ、と述べています 。


評価軸C:快適性・リラクゼーション

ヒメボタルの保護と、それを支える水環境の維持が最大の焦点です。

1. ヒメボタルと光害

大場委員は、防犯灯などの人工光がホタルの繁殖に与える影響を試験的に調査し、科学的に検証する必要性を説きました。

2. 森の保水力と水循環

寺井委員は、市の「水の環復活2050なごや戦略」の目標値(直接流出率36%)と本事業の整合性を問うべきだと主張しました。

注)水循環(都市水文学)の問題は、相生山緑地問題において決定的といえます。


評価軸D:安心・安全性

救急車両の通行確保と、周辺の生活道路への影響が議論されています。

1. 生活道路の「抜け道」問題

松本委員や加藤委員は、幹線道路の渋滞を避ける車が住宅街に入り込む現状を精査し、将来的な交通規制の必要性に言及しました。

2. 安全と環境の背反

加藤委員は、救急搬送時間の短縮というメリットに対し、道路下流側の八事方面などで新たな渋滞や事故リスクが発生しないか、詳細なシミュレーションが必要だとしています。


評価軸E:環境負荷性

低炭素化への寄与と、生態系の多様性維持のバランスが議論されました。

1. 戦略的環境アセスメントの欠如

加藤委員は、建設を前提とした従来のアセスではなく、複数の代替案から最適なものを選ぶ「戦略的環境アセスメント」の視点で、そもそも「造らない」という選択肢を含めた再検討を促しました 。

注)この指摘も重要です。

※「戦略的環境アセスメント」の用語解説は、下記を参照。


委員会が提示した「要約的な結論の方向性」

第1回・第2回の議論を通じて、山下委員長は以下のスタンスを明確にしています。

1. 価値中立的な科学の提示

委員会は政治的な「是非」を決定するのではなく、判断の材料となる科学的根拠を提供する 。

2. 不確実性の可視化

評価シートの多くの項目で「データ不足により分析できず」とされている通り、現状では科学的判断を下すための材料が揃っていないことを認める 。

3. 未来志向の議論

40年以上前の決定に縛られるのではなく、現代の環境意識や都市戦略(COP10や生物多様性戦略など)に照らした再検証を行う 。


専門用語の解説

  • 交通政策のASI(回避・転換・改善) 交通需要を見直すための基本的な考え方で、「Avoid(回避)」「Shift(転換)」「Improve(改善)」の頭文字を取ったものです。まず移動そのものを減らし(回避)、次に自動車依存から公共交通や徒歩・自転車へ移し(転換)、最後に必要な移動の効率や環境性能を高める(改善)ことで、持続可能な交通体系を目指します。

  • 戦略的環境アセスメント 個別の開発事業ではなく、政策や計画の段階から環境への影響を評価する手法です。道路計画や都市計画などの初期段階で複数案を比較し、環境負荷の小さい選択を検討できる点が特徴です。事業実施直前の評価に比べ、より広い視点で環境配慮を組み込めるとされています。


明らかになった問題点

第2回学術検証委員会で明らかになった問題点は、次の通りです。

1. 科学的な根拠やデータの不足

道路建設についての科学的な根拠やデータの不足が指摘されました。 もっとも重要な部分が欠落している計画といえます。

2. 名古屋市の、都市としてのビジョンの欠如

環境政策と道路政策の矛盾は縦割り行政の弊害ともいえますが、都市としてのビジョンが欠如していることが根本的な原因ではないか? という意見が出ています。

3. ASI(回避・転換・改善)の欠如

公共交通(地下鉄)などによる、交通発生の「回避」と「転換」の検討が不十分であり、道路建設という「改善」に偏っている、と指摘は重要です。

4. 戦略的環境アセスメントの欠如

現代の都市交通政策において、ASI(回避・転換・改善)は世界標準であり、「戦略的環境アセスメント」とセットで運用することは、不可欠かつ最善のアプローチとされています。


感想

問題点がたくさん指摘されています。

結局のところ、高度経済成長時代の1957年に決定された時代遅れな計画であることが、根本的が原因といえます。

これにより、道路建設の「合目的性の判断が困難」という状態になっています。

にもかかわらず、行政や市長・市議会は道路建設に前のめりとなっており、その姿勢は異様といえます。